(続き)
一般書籍で見ても「国民史の枠組み」が〈各国史〉叢書として存続する一方、『地中海世界史』全5巻(青木書店 1999-2000年)*1 や『地域の世界史』全12巻(山川出版社 1997-2000年)*2 のような企画も充実しています。気軽に読める叢書で〈世界史リブレット〉(山川)や〈~を知るための…章/エリア・スタディーズ〉(明石書店)*3 にも、多様な視点が反映されていることは見て取れるでしょう。
1) http://rekiken.jp/publication/chichukaisekaishi/
2) https://www.yamakawa.co.jp/product/search/?q=%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%8F%B2
3) https://www.akashi.co.jp/news/n3853.html
さて、ご紹介いただいているシリーズの内、『地中海世界史』について見てましょう。
この企画、私もとてもよいものだと思いますが、これもやはり「古代」・「中世」を中心にしたものです。この時期は「国民」が存在していないので、「国民史」とはなりません。
また、この時期からは歴史学と思想史が分離するので、古代ギリシア哲学における「エジプトの影響」なり「アフリカのキリスト教の重要性」なり、「ユダヤ・キリスト教」のオリエント起源なり、というトピックは扱われない。2,3に挙げられている叢書についてはコメントは省きます。
それよりも重要なことは、日本の「歴史学」のディシプリンはそもそも欧州、特にドイツ(ランケ)から導入されたものであったため、近代史においては当然国民史・国家史から出発せざるを得なかった、ということ。
日本中世史の創始者原勝郎、東洋史の狩野直喜、宮崎市定さえ欧州に留学しています。
さて、ホイジンガに戻ると、『中世の秋』はブルクハルトの『イタリア・ルネサンスの文化』と並んで、文化史であるとともに文学作品と言えるもので、これは簡単に「模倣」・「導入」できるものではない。
まずはロンドン、フランドル・ブルゴーニュ、リヨン、イタリアという当時の欧州の動脈の分析から始めるべきだったでしょう。
QT: https://wstrsd.masto.host/@adachika192/110799822292184986 [参照]