「日本のサブカルチャーにおけるフランス革命観」下
少し驚くのは、国民公会期を舞台にした木原敏江の『杖と翼』(2000年代初頭連載)。
この漫画では、サン・ジュスト、ロベスピエール、ダントンがきわめて好意的に描かれている。とくに美貌と才能に恵まれた「死の大天使長」サン=ジュストは、主人公と深い絆と持ち、「共感」もある人物、一種の「夭折の天才」とされている。
勿論、革命の「行き過ぎ」は人道的な観点から、批判的に描かれるものの、「私生児」の法的廃止=財産相続権など、国民公会下での「達成」にも言及される。
付け加えると、国民公会の時に「奴隷制廃止」が決議され、これがハイチ革命、世界初の「黒人共和国」へと繋がっていく。
これに対し、F.フュレ編の『フランス革命事典』の78年版では「ハイチ革命」の項目はありません。また何はともあれ、普通選挙権(男子のみだが)が与えられたのは国民公会においてです。
『杖と翼』では、ロベスピエール、サン・ジュストが社会的「平等」と「公正」を志向していたことがポジティヴに描かれる。ただし、ダントンの方をより洗練された政治家とする。これはまさにミシュレ的革命観です。
他方、1980年代から日本の大学のフランス史はフュレ達の「修正主義」に翻弄されることになる。