「日本のサブカルチャーにおけるフランス革命観」(上)
仏本国のフランス革命研究の変転に伴って、日本のフランス学もこれに振り回されることになります。
しかし、意外にサブカルチャーにおける「フランス革命観」は変化していません。
まず有名なのは1972年に池田理代子が連載をはじめた『ベルサイユのばら』。これは、池田がS.ツヴァイクの『マリー・アントワネット』に感銘を受けて構想したとされています。
また彼女は東京教育大学文学部哲学科在学中、民青で活動していた、というから、これはいわばある種の教養主義(ツヴァイク)+ソブール史観(左派の古典)の延長戦上にあると言えましょう。
勿論物語は1789年7月14日のバスティーユ襲撃とオスカルの死で終るので、その後の93年までの展開、という解釈が分かれる重要なポイントは描かれないのですが。
しかし、大貴族・聖職者の退廃と民衆の困窮、良心的貴族の逡巡をへた革命への加担というストリーは滑らかに進行し、89年革命については、ポジティヴであることが前提です。
ただ、この漫画を元来原作としていたアニメ「ラ・セーヌの星」と同じく、マリー・アントワネットの処刑あたりから、「革命のゆきすぎ」の側面にも光はあたるけれども。しかし「革命」の肯定は揺らいでいません。