著者の森政稔先生からご恵投いただきました。
森先生は、17-18世紀、「リベラリズムー保守主義」中心の従来の政治思想史の枠を超えて、19世紀における「政治」と「社会」の分離、そこでの「社会」的なもの役割、について先駆的に研究してこられました。
またマルクスが「ドイツ・イデロギー」で一方で批判したM.シュティルナー、「哲学の貧困」でこれまた一方的に批判されたプルードンを、両者のテクストから再構成して論じています。
またメアリー・シェリーの父、メアリ・ウルンストンクラフトの夫W.ゴドウィンについて論じた貴重な論文が収録されています。
ゴドウィンは、フランス革命時のイングランド急進派の思想家、同時に近代アナーキズムの出発点ともされます。
私は、W.ブレイク、P.シェリーと並んで、この時期のイングランド急進主義の思想家としてゴドウィンに長年注目はしているのですが、日本では、主著『政治的正義』の訳もまだありません。
それにしても駒場の教官としては、群を抜いた「奇人」であった森先生、ゼミの途中で「心の友」の「猫」に餌をやりに行く、という習慣はまだ続いているのだろう。
森先生は「無駄な学会」にも関係せず、研究室と自宅と往復する毎日を続ける「学問の鬼」。「ヒト」にはあまり期待せず、友は「猫」数匹だった。