「 チャブ Chaves」ー英国の学歴エリート右傾化の「徴候」
先日「右傾化する英国エリート」について投稿しました。
「チャブ Chavs」という言葉は、現代英国の学歴エリートの右傾化の「徴候」とも言える言葉です。
「チャブ」とは、下層階級や労働者階級の「低学歴層」への侮蔑用語。また「公営住宅」在住、暴力的、麻薬依存などのコノテーションを伴います。
さて、問題は、元来労働者階級であった筈の「労働党 Labor Party」の中堅以上の幹部が、ほぼこの感覚を共有していること。
この労働党幹部の右傾化は、「第三の道」を唱えながらも、実質サッチャーの新自由主義を継承し、外交的にもブッシュのイラク侵略戦争に積極的に加担したT.ブレアから決定的なものとなります。
数少ない「正統派」社会主義者、J.コービンは、左傾化する若者が大挙して入党することで党首に選ばれましたが、党組織からは有形無形の嫌がらせ、サボタージュを受け、ついに辞任に追い込まれました。
「チャブ Chaves」によってこの傾向を告発したO.ジョーンズ(1984生、オックスフォードで歴史学専攻)はパブで極右に襲撃されています。
O.ジョーンズ、父はウェールズ出身の労働組合活動家、かつてであれば歴史家の道を歩んだでしょう。
英国アカデミズムの保守化
O.ジョーンズを排除する英国アカデミズムの保守化、ここにもかつての大国の自閉化が見受けられます。
さて、ここで英国的「修正主義」、とりわけ17世紀史について補足します。
17世紀は「17世紀危機」が論争になるほど、16世紀・18世紀と比べて全欧州的に動乱の時期でした。
特に、ドイツ、ネーデルランド、イングランドではそうです。
ドイツではいわゆる「30年戦争」の時期に当たり、オランダでは、ウィット兄弟の共和国とその転覆、そしてスピノザの時代です。
イングランドでは、「ピューリタン革命」によって国王チャールズ1世は処刑され(最高裁である議会で議決)、O.クロムウェルによる「共和国」となります。
しかし、C.ヒル、H.ホブズボームの世代の「前」と「後」ではこの事件を「内乱 civil war」と呼びます。
このことで、マグナ・カルタまで遡り、名誉革命によって完成される「英国立憲主義」の連続性が前景化されるのです。
近年は、環境史との関連で、「17世紀危機」を地球的気候変動と関連付ける議論も有力です。
しかし、17世紀、東アジアでは人口動態でも政治秩序でも相対的安定期。日本に至っては人口2千万から3千万に増加。
さっぱり「グローバル」な説得力がありません。