「暗殺」と「密偵」
日帝支配下の朝鮮・満州・上海を移動する「独立」運動の闘士たちの映画、「暗殺」。
決して「シネフィル」的な映画ではないが、「密偵」と並んで、近年の「韓国」映画の湧き上がるパワーに溢れている。
日本映画・批評の低迷は、政治・社会と正面から向き合ったよい意味での「大河メロドラマ」をひたすら回避してきたことに一因があると思う。無理につくろうとすると、結局山本薩夫や山崎豊子のリメイクになってしまう。
ここでは詳しくは論じられませんが「この世界の片隅で」(映画)の決定的な弱点は脚本の弱さ、というか悪い意味でのナイーヴさにあると思います。
一点だけ、主人公の夫が海軍法務部に勤め、陸軍を戯画化するという戦後流布した「物語」になっていますが、現実にはそれほど単純なものではない。陸軍、海軍双方に大きな責任がありました。
また、主人公の肝心の台詞、ほぼ聞き取れないし、また「聞き取れた」としても原作のように「在日」の人々への眼差し、とは受け取れません。
従って、この映画に対して在日の方、韓国の方が違和感をもつのは当然でしょう。
映画は「総合芸術」なので、いくら視覚的に繊細な絵をつくれても、戦争を扱いながら脚本が決定的にダメであれば、少なくとも私は評価できない。