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『サキの忘れ物』(津村記久子)

半年ほど前に出先の図書館で読みかけになっていたのをようやく読み終えた。表題作のは、善意と悪意と無関心の三者のバランスが絶妙だ。このバランスがピタッとハマった時の津村記久子は、本当に氏にしか出来ない味わいを出してくれる。
ウワーッ……と感じたのは「喫茶店の周波数」。店を畳む数日前の喫茶店にやってくる人々の姿を描出する。閉店間際の喫茶店というやや特殊な環境に置かれることで、彼ら彼女らの人間性(ある意味では、醜さ、と言ってもいいかもしれない)が誇張される。その具合が何とも言えず不快で、その不快感こそが津村記久子の小説の魅力である。

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