『TUGUMI』(吉本ばなな)

ドライでありながら瑞々しい。情景描写と直接的な内面の描写とのバランスに秀でているように感じられた。淡々と情景が描写されたかと思えば、それに対する反応として独白がある。独白はあくまで情景に対する反応の体裁を取っているが、明らかにそれより深い洞察から生じたものである。
筋書きとしては(2024年にエンタメ小説を書こうと手に取った不誠実な読者にとっては)シンプルでイベントの数も少ないのだが、その間を埋める情景や内面の描写がまったく埋め草になっておらず、むしろその描写こそがページをめくる手を止めさせない。次に彼女たちは何を「思う」(≠「する」)のだろうと想像させては、毎回それを上回る複雑な描写を見せてくれた。
吉本ばななの長編を読むのは初めてだったが、何作かさらに読んでみよう。
amazon.co.jp/TUGUMI-つぐみ-中公文庫-吉

普通に勉強になって、私の小説は主人公の男子(素朴なものの見方をする)とヒロインの女子(屈折したものの見方をする)の視点が交互に現れるのだが、後者を充実させる突破口になるだろう。前者は「する」の結果として「思う」、後者は「思う」の結果として「する」で物語をドライブさせることができるのかもしれない。そういう整理をできた。

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ところで本作を読むきっかけはClaudeとのセッションで、主人公とヒロインの二人のものの見方を鮮明に対比させた方がいい、またそのためにはこれこれが参考になる、といったアドバイスをくれて、しかもまさに勉強になる作品だったので、そこにも感動している。セッションを通じて、何が足りていないのかよく見えるようになってきた(具体的には、内面の直接的な描写と現代風のモチーフが足りないらしいです)。

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