伊坂幸太郎はエンタメを書かせたらきっちり及第点を出してくれる。プロのエンタメ作家。
こわい男から逃げようとする記憶力抜群の女を、不運な殺し屋がなんやかんやあって助けるハメになってしまう密室エンタメ。伊坂は殺しのアクションを描けば軽快で、殺しのハウツーにはロジックもあり、読者が忘れた頃に姿を現すお手本のようなミステリも仕掛けられる。
映画にすると二時間に収まるし、映像としても見どころがあるだろう、こういう真っ直ぐなエンタメを読むとひたすら勉強になる。
最も勉強になったのは舞台選び。密室になったのは二十階建ての高級ホテルなのだが、高級ホテルだけあって空間にバリエーションがある。密室モノでも手札をシンプルにする必要は全くなくて、物語の要求に応じて増やしていいんだ。そういう発見があった。
数多いる登場人物の使い方も卓越している。同じ目的を有する複数の人物は要素が共通する一つのチームにまとめてしまって、読者の認知の負荷を減らしている。で、ミステリのタネはその認知の隙間に差し込んでおく。異なるチームはしっかり毛色を変えておく。重要な登場人物は一気に出し切ってしまう。重要じゃなくなったらとっとと退場頂く。見事。
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