『ギケイキ 千年の流転』(町田康)

クソ笑いながら読んだ。室町時代に成立した軍記物語である『義経記』を現代風にアレンジした小説なんですが、その頭で読むと書き出しから殴られる。
「かつてハルク・ホーガンという人気レスラーが居たが私など、その名を聞くたびにハルク判官と瞬間的に頭の中で変換してしまう」
現代である。地名もいまの四十七都道府県で書かれたりするし、西暦が使われたりもする。ぶっ飛んでいる。
しかしながら、ここが町田康のすごいところ。源義経を始めとする人物、みな「っぽい」のだ。地元のヤンキーっぽさがあるが、当時の死生観(と読者が思ってしまう価値観)がガンガン滲み出てる。一言で言うと、躊躇いなくめっちゃ人を殺す。そういう時代だったので、と。
現代の書きぶりと当時の価値観とが調和して、謎のバイブスが生まれている。それが『ギケイキ』だ。 

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小説技法の話を真面目にすると、ファンキーでぶっ飛んだ語り口の割合(っていうのかな?)がコントロールされている点が見事である。シリアスな場面でそうすることでかえって面白みを感じさせたかと思えば、本当に重要な場面では当時の価値観を強調し緊張感を与える。メリハリがあった。

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