『Google半導体とRISC-Vと世界の電子地政学』(田胡治之)

半導体はハードとソフトとが高度に融合した賜物である。ハードとしては、純度99.999999999%のシリコンを千に及ぶステップで加工して製品化されたものが「半導体」である。しかしながら、半導体はモノが出来ただけでは動作しない。ソフトとしての半導体が計算(その通り、単純な計算から、画像の表示から、機械学習まであらゆる用途)をするためには、適切な「命令セット」が組み込まれなければならない。
本書はその「命令セット」のうち、GoogleとアメリカのDARPAが開発したオープンソースな「RISC-V」を解説した一冊である。なお、「命令セット」の現在の覇者は、ソフトバンク傘下のArmである。
RISC-Vの利点とは、一言で言えば、オープンソースであることだ。これにより、半導体メーカーはライセンス料や特許料を支払う必要がなく、安価に容易に半導体を設計することができる。その手軽さは、他のメーカーの呼び水となる。別の言い方をすると、オープンソースであることによりRISC-Vのエコシステムが強化される。また、オープンソースであることにより、広いユーザーから改善を求めることができる。半導体の「民主化」に繋がるシステムである。

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電子地政学の一冊としては、日中韓台以外のアジア――インドおよびベトナムの半導体産業の紹介があったのはレア。類書を多く読んできたが、この二カ国は初めて目にした。また、ラピダスに冷静な視線(仮に2nmを達成できたとしてもエンドユーザーが日本には存在しない)を向けていたのも好印象。
半導体産業の裾野の広さをひしひしと感じさせられた。

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