『会話を哲学する:コミュニケーションとマニピュレーション』(三木那由他)

会話がどのようにして成り立つのかを分析する一冊。会話を「コミュニケーション」および「マニピュレーション」の側面に分解し、前者は互いに約束事を形成すること、後者は聞き手の心理に影響を与えようとすること、と定義する。日本の(比較的)新しい漫画・文芸から様々な会話をサンプルとして取り上げ、それらが有する「コミュニケーション」および「マニピュレーション」の側面を実作と照らし合わせながら説明する。
個人的に興味深かったのは、「コミュニケーション」が備える約束=責任の側面を成立させるため/あるいは成立させないために高度な心理戦が仕掛けられるということ。『同級生』の分析が面白く、お互いに(内心では)了解している事柄だけれど口に出してしまうと約束=責任が生じてしまう……、責任を負いたい側(責任を負わせたい側ではなく)からのアプローチという考え方は、私の抽斗にはなかった。勉強になる。
amzn.to/3toweMS

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私は小説をやる人なのでどうしても「会話シーンの勉強のために」という側面で読んでしまっててあまり素直な読者ではないのだけれど、本書は、会話のことを一つの技術だと捉えているらしく、心強かったですね。言葉そのものや言外の意図を織り込んだ会話は、それだけでアートであって、たぶん技術でつくれる。会話が成立する背景とか、話者のキャラクター性とか、そういうのを分析すれば、たぶん頭で(そこそこは!)つくれる。そう思わせてくれるような一冊でした。

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