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『演劇入門』(平田オリザ)

再読に次ぐ再読。バイブル。
『演劇』と銘打って戯曲の書き方を説くように見せる一冊なのであるが、その実は、著者・平田オリザの人間観に関する一冊なのである。したがって氏の人間観を受け入れられるか否かで評価の割れる一冊でもあろう。私は、氏の人間観をいったん受け入れることとしている(いったん、というところに機微を感じてほしい)。
戯曲の書き方のテクニカルな一面を取り上げると「セミパブリック」という概念が本書の幹だろう。パブリックとプライベートとを接続する場。パブリックな場の一方通行な演説とも、プライベートな場の閉じた会話とも異なる、他者との対話が可能となる場である。そこでは、人々がそれぞれ知っている情報に濃淡があるがゆえに、情報の混ざり合いが起きる。セミパブリックこそが観客に驚きを与える場、触媒として作用する。
演技論では上述の「情報の濃淡」をコンテクストの違いと呼び、その違いを身体表現から自在に演じ分けられる役者が優れた役者であると説く。
これだけ読み倒すと新しい発見があるわけではないのだが、小説を考えるときのチェックポイントとして機能してくれる。バイブルです。
amzn.to/46qajnf

「セミパブリック」の概念は頭に叩き込んでいても、どうしても(一見して)作劇上はラクだったり魅力的だったりな場に逃げてしまう。(いわゆる「窓辺系」ですな。)いやいや、そうじゃないでしょ、と。事前に頭で汗かいて産みの苦しみでセミパブリックを確立するからこそ 、ラクだったり魅力的だったりな場を作劇できるんでしょ、と。そう戒めてくれる。

逆に、どうしても使いたい場所や時間があるなら、なにを足し引きしたらセミパブリックにできるかを考えなきゃいけないんだよな。

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