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川村湊『熊神 縄文神話を甦らせる』

kawade.co.jp/np/isbn/978430922

著者があとがきで言っているように、主題は縄文と諏訪・熊野の信仰で、共通項として熊を見出したというのは読んでいて分かる。全体として面白く読んだが、本文中で吉野裕子『蛇』を牽強付会と批判的に取り上げているわりに、稲作以前(=縄文)の狩猟痕跡が現在も神事として残る諏訪社はともかく、道祖神やミシャグジ、土偶あたりの論はややこじつけ感がある。

狼と並んで人間に近しい自然の脅威であるはずの熊が、アイヌ文化圏以外では信仰、神話、民話の中にほとんど登場しない。その「熊の不在」を追いかけると、却って「これは熊だったのでは? (鬼と同じく)まつろわぬ者あるいは畏怖の表象として、熊(外形も鬼に似ている)は排除されたのでは?」と神たる熊が浮かび上がってくる。マタギの忌み言葉や、アイヌ語に直接熊をさす言葉がないという事実からも「隠された神」のイメージが強まる。

熊の神が消失したことと、本州以南にクマが少ないことには相関がありそうで、つまり、生活圏に熊がいなくなったために畏怖の念が薄れ神性を失ったのかもしれない。だとしたら、熊神は「人間が殺した神」とも言えるか。

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