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伊与原新『月まで3キロ』

shinchosha.co.jp/book/120762/

件の道路標識、地元にあるので何度か通りかかったことがあるのだが、自分も初めて実物を見た時はつい「うわぁ」と浮かれた声を出してしまったので、作者が題材にしたくなった気持ちはよく分かる。ちなみに周囲はただの山。景色は良い。

普通の人たちが普通に悩み苦しみつつ、普通に生きていく話。大事件は起こらないが、ごくありふれた景色の中の営みに謎があり、それが徐々に明らかになっていく。謎の引っ張り方が上手くてするする読めるし、読後感は爽やかで軽い。

『天王寺ハイエイタス』が特に良かった。作者は地学を研究していたそうで、他の短編でも地学ネタが重要なモチーフとして出てくるが、この短編のタイトルにある地学用語の「ハイエイタス」の意味が分かると、イメージがパッと開けるのが爽快。関西弁の会話のリズムも快い。

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