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ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

shinchosha.co.jp/book/205212/

「百年の孤独」とは誰のものなのかと考えながら読んでいたが、物語の人物たちはみな孤独を抱えていて、なんなら物語の舞台である、他の町とどこか隔絶した雰囲気があり、最初から終わりを示唆されているマコンドという町も孤独そのものに見える。

死者が闊歩し、錬金術や魔術、非科学的な出来事が頻出するわりに、不思議と地に足のついた感じがする。これがマジックリアリズムか…。表現手法の成果でもあるが、浮世離れした男たちに対し、生活を守る女、特に「母」たちの堅実さや芯のある強さが印象に残っているせいもあるかと思う。物語内の数多のエピソードは作者自身が体験したり祖父母などから伝え聞いた実話をもとにしているらしく、どことなくルポルタージュっぽさもある(そういえば「ガブリエル・マルケス」という人物が登場するのは、現実と非現実の曖昧さを狙った遊び心だろうか)。

クライマックスの数ページが凄い。最後のシーンを読み終わった瞬間、ページが白紙になったような錯覚すら覚えた。血(暴力と性)で描かれた濃密な百年の歴史の物語だというのに、なんと儚いことだろう。

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