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吉見義明『草の根のファシズム』

iwanami.co.jp/book/b611144.htm

「徴発」という言葉が頻繁に出てくる。徴兵と同じく「国のためならやむを得ない」というニュアンスを持っているが、物資や人員を提供させるのが中国やフィリピンの人々であれば、それは明らかに略奪である。そしてその略奪を行なっていたのは、ごく普通の善良な日本人であった一般の兵士や移住民であった。だいたいは、略奪者自身が困窮していたために略奪を正当化している。追い詰められていたのだから略奪行為そのものは責めきれないが、そこに帝国主義ゆえの他国への見下しや差別があったことは見逃せない。天皇という責任者を戴くことで、国民個々の加害性が曖昧になってしまったために、戦後も十分な自省のできないまま今に至っているように感じてしまう。

ファシズムの本質は「強制的同質化」であるという。本心では納得のいかない非道なことを拒否できない板挟みの苦しさを、自己正当化して忘れようとした心理は理解できる。が、そのメカニズムを知り得た現代の我々は、人間として真っ当であり続けるため、均質化の流れに抗わねばならない。

昨今の世情を見ても、日本人は殊に正常性バイアスの強い国民だとわかる。それはつくづく全体主義と親和性が高いことを忘れずにおきたい。

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