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イーユン・リー『千年の祈り』

「好女人」という言葉がしばしば出てくる。日本でいう良妻賢母に近いだろうか、その素晴らしい「理想の女性」像は、他者から押し付けられた瞬間に、はみ出すことの許されない枠となるように見える。(なお、翻訳者の後書きによれば「好男人」という言葉も原著に出てくるが敢えて別の言葉に置き換えたという。そのままで良かったのではと思う)

収められた短編の多くは家族の情というか執着の話だった。疎ましく思いながらも突き放せない親子の情、一見静かだが狂気をはらんだ性愛、田舎の古臭く頑なな純粋さを厭いつつも捨てきれない郷愁、思いがけない方向へ転がった過去へのとらわれ。
一人っ子政策と、共産主義から資本主義への変化が、かの国の家族の形を大きく変えたのだろう。断絶はそこかしこにあり埋めるのは容易ではない。登場人物たちはみな孤独だ。結末もビターだが、そこに小さな変化の萌芽を感じるせいか、読後感はそれほど暗くない。

個人的には『不滅』『市場の約束』が特に印象に残った。

kawade.co.jp/np/isbn/978430946

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