劉慈欣『円』
時の流れが止まりかけているようなノスタルジックな農村から、銀河系すら砂粒扱いの大宇宙まで、視点のジャンプ率がここまで大きな物語を読んだのは初めてで度肝を抜かれた。現代社会への批判や皮肉がかなりぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、短編とはいえ1話1話を読むのもなかなか骨が折れたが、評判通り面白かった。
アイデアとしてはやはり表題作『円』の「国家プロジェクト」が秀逸だった。『円円のシャボン玉』はわりと明るいトーンで読みやすく、『郷村教師』『詩雲』はスケールの大きさにくらくらするが、文化や学問が世界を変えるかも、という希望を感じさせてくれるのが良い。