『アダプション/ある母と娘の記録』でメーサーロシュ・マールタを初めて見たけどこんな良いのか。リバイバルでの公開時に初めて名前を知ったのだが、こんな感じなのねー。子どもがほしい木工の中年女とティーン(年齢は明示されてないが未成年)で家を追われた不良娘が擬似的な親子関係を結ぶ、という物語だけでは到底表しきれない、人が生きていくということをじっと見つめて、見つめて、見つめる映画だ。他のメーサーロシュ(ハンガリーなのでこっちが苗字)の映画も見てみよう。かの(東欧映画界隈で)有名な撮影監督ヤンチョー・ミクローシュとパートナーだった時期もあるのね。
身体とか仕事とか家のこととかの細部がなんかいい!の連続でね。皿を片付けるときの「おたまも?」みたいな小さい台詞まで、なんかいいんですよ。シャワーを浴びるたるみや傷のある皮膚とか美容院できれいにしてもらうとこもよかったなあ
すぐ試すようなことをしてた娘が彼女を本当の意味で信頼し始めるとこの一連美しかったなー、ふたりでメニューをのぞきこむときの一言も声に出されることのない「こういいことがしてみたかった」が手に取るように伝わる笑いとか、あれは親子関係の模倣というよりもシスターフッドともいえるし、恋人たちのようにもみえるし、母娘がどちらかわからなくなってる感じ
工場の女たちのひび割れた肘や迷いなく動く指先、木屑で真っ白になったのをエアスプレーみたいなのでわーっと吹き飛ばすのとかめっちゃいいシーン。すごいクローズアップでこっちを見ているような、しかし観客にも対話相手にもギリギリで正対しない視線。その場にいるかのような超クローズアップで次々に人物を画面に入れながらゆっくり横移動→回転していく(多くの人はこんなふうに近くから人を見ることはあまりないはずなんだが、なぜだか不思議な臨場感があるのよ)のが特徴の撮影はじっくり重厚、しかしウダウダしたとこがない「ある女の物語」はすごい勢いで進む、超機能美の世界なのも好き。
撮影監督じゃなかった、監督だ