今日は『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』と『フィリップ』を見てきました。

『ハロルド~』のほうはみんなに応援されながら長距離を歩くおじいちゃんということで『君を想ってバスに乗る』みたいな話かな?と思ってたら全然角度が違っていた。我々は過去からも現在からも予定された未来からも逃れられない、みたいな話で結構シビア。You will not die, You will not die.の歩みの言葉が消えていく。大事なのはそこではなくて。

「本能的なことって案外難しいものよね」とか台詞がいい感じ(原作者レイチェル・ジョイスの脚本)。光が綺麗な撮影は大好評だった『コット、はじまりの夏』のケイト・マッカラ。ノーマル・ピープルでへティ・マクドナルド監督と組んでたのね。

勢いで家を出て歩き出したら独りになる、考える、外の景色が見える、なにを見ても何かを思い出す、否応なく過去の傷と向き合うことになる、というのが思いの外厳しく描かれている。

こういう話には珍しくお金の話が結構ある(「予算内でやってるし」)。

とはいえ英国人情ものの伝統(だと思う)困ってる人には四の五の言わせず親切にすればいい感を外さないのが嬉しい。「人間は基本的には親切なものよ」

癖の強い風貌のハロルドさんの息子役の人、どっかで見た顔だよなあ…と思ったらクレジットであー!アール・ケイヴか!ってなった(それくらいは思い出そうね私…)

『フィリップ』なかなかよかった。意外な展開で推進するのでなく、そもそも話の枠が一筋縄じゃいかないやつというか。
予告を見てなかったんだけどこれは事前になにも知らず見て正解だったかも。想像していたどぎつくてひねくれた感じ(チラシだとそう思うじゃないですか)の映画とだいぶ違ってすごいまっとうな反ファシズム映画だと思う。確かに奇妙な味付けもあるんだけど。いやこの映画にこんな冷え冷えしたデジタルなスコアがついてるとは思わなかったよ!音楽すごくよいです youtube.com/watch?v=4KJg8vV0NF

出自を隠してホテルでフランス人として働きながら復讐としてドイツの女たちを籠絡するフィリップ、という構造を作ることで国家主義とセクシズム/ミソジニーの切り離せなさを浮かび上がらせているのだがここはかなりトリッキー。その行動に嫌悪感を持たずにいることは難しいのでこの状況でロマンスを成立させちゃうの?というスリルのあたりはウーン?と思ってしまう。が、そこからの。

こどもたちの描写とか若者たちの地下ジャズパーティのとことか空襲シーンであまり見たことのない描写があったのとか(画面の向こうからただグワーッと煙が押し寄せる、あれ何かしら元ネタがあるんだろうか)色々良いシーンあったけどラストシークエンスがまあ見事だったわね。

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『人間の境界』もすごかったし、ポーランド映画気になってきたわよ

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