『別れる決心』を見ました。パク・チャヌクとは相性あんまり良くないので劇場観賞パスしちゃってたんですが、いや見逃さずよかったですね、これは面白かった。これまでの路線からして大映風味なのかしらと思ってたのだが、意外にも大仰なとこを最小限に…というか「そこ?」ってとこに仰々しさを持ってくるのでローテンションの中に謎美学が炸裂することになってて、何これ…が頻発。これまででいちばん気に入る変さでした。
なんでこんな謎に面白い…というかすっとんきょうな撮り方してるんだというのもあって殺人事件の話なのにほとんどスクリューボールコメディ、なのだが今この時代にガチのメロドラマをやろうとしたらこうなるよねという真摯さとも取れる。笑わせにかかってるのか真顔なのか、ギリギリで掴ませない映画としての佇まいがヒロイン像と重なる。
諏訪部先生がノワール文学講義で示しているとおり、ノワールとスクリューボールコメディは繋がってるのだからこうなるの当然なんですよね。鈍感な男は鈍感であるがゆえに、鈍感では生きていけない女は鈍感でないがゆえに、行き着くところまで行くしかない。
主演2人の顔のつかみどころのなさがいい感じにのらくらした語りに繋がってて、特にタン・ウェイの壁の前で上半身揺らしながら話すリズムとか指先の使い方に痺れた。