こういうのを見ること自体が問題なのかもしれないが…しかしこのベターってした発色(みんな顔が灰緑色)のトンチキな夢っぽさにはなんか純粋映画性は感じる。吸血鬼(原形に近く牙でなく乱杭歯なんですね)と宗教と性と血と花畑、メガネ青年に父親に母に祖母に宣教師に美しいお姉さまにと全方位に炸裂する甘美なソフトコアっぽいロリータエロスの概念を圧縮した空間にもかかわらずなんか「どういう話なんだよ」が勝ちすぎてるんだよな。
とはいえお屋敷ー!イヤリング!白レースの胸元!ハチミツ!くだもの!水浴びする金髪の娘たち!仮面の男!ムチ!楽器!わたあめのような蜘蛛の巣!花売り娘!倒れ込むシーツで千々に乱れる黒髪ー!ひなぎくに散った血!色とりどりの文字で書かれたお手紙!とか、一部を切り出してみれば完璧に「乙女」的なものなのである。
乙女とおっさんの性的妄想共犯関係については搾取の型であったことは認めざるをえない、しかし、このあたりのアリスモチーフの規範外に向かおうとする自由と性のややこしさは(特にこれチェコヌーベルバーグの流れだもんな)少しほどいて考えていったほうがよいよなあとは思っている。