ファビウスと叔父さんの小ピオ
叔父について話す時、トゥベロとはしばしば印象が食い違う。あんなおっかない人は他にいないだろうとファビウスが言うとあんなに優しい人は他にいなかったとトゥベロが言い、幼い頃過ぎた悪戯の末に夢に見るほどのお叱りを受けたことをこいつは忘れたのかと疑うのだが、どうやらトゥベロはそのお叱りを愛情の証と見ているのだ。兵士たちが全員こういう思考をしていれば叔父も苦労しなかっただろう。
兵士たちの叔父を見る目といえば、恐れ、あるいは畏怖、そこにも届かない疎ましさ、それらを経た敬慕、憧れ。彼に認められることこそが自分の価値を証明すると信じ、そうするうちにいつまでも続くかと思われた戦争が終わる。怠け癖のついた兵士にあれほどあからさまに蔑む態度を見せた叔父が、自分の仕打ちに慣れた彼らに私財から報酬を与えてその少なさにすまなそうに目を伏せているのを見て、カルタゴとヌマンティアを比べることをいっとき忘れる。
彼の厳しさにも優しさにも慣れているファビウスはそういうこと全てを計算づくでやっていればよかったのになとだけ思う。そうしたら、彼が死ぬのを待ち望んでいた者たちが浮かれる暇もなかったかもしれない。その虚ろに叫ばれる快哉を、叔父は耳を貸すに値しないと言うだろうと思うと少し、寂しかった。