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ユグルタと小ピオ 

ご家族への手紙ですかと言いかけ、やめられたのまではよかった。彼に子がなく妻との折り合いが悪いことは知っていたし、仲の良い兄はまさにこの陣営で軍団の半分を指揮している。だから書きかけの手紙は知らぬふりをして、当初の用向きだけを済ませるべきだと思った、そこまではよかったのだ。
しかし当のスキピオが「君の父上への返事を書こうと思っていたところだ」と言い、「君の送る返事と一緒に送ってもらえるかい」と加えたので、何かがずれてしまった。勿論と頷けばいいものを、送られてきていない手紙に書く返事はないと口走ったほどには。スキピオは少しだけ不思議がる目をしたが、ならば君の近況をもっとたくさん書かなければとパピルスを見下ろした。
「僕が書かなくても伝え聞こえているだろうけれどね」
「……いい子にしていると」
「うん?」
「書いてください。養父もあなたが言うなら信じるでしょうから」
どんな想像をしたものか、スキピオは笑って肩を竦め、なにも答えなかった。それが了承を示す仕草だと察して久しい。養子を誉める手紙をスキピオから受け取ったミキプサの顔を思い浮かべ、いっそなにも書かないでくれと言えばよかったと思った。

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