このまとめはざっと読んだが、最初は「書き手の男女で差があるぞ…女性はYAや少女小説のミームをいじるし、男性はエロコンテンツ〜ラノベ〜青年誌のミームをいじる。女性向けなら友達モチーフけっこうあるやん!」とか思った。
が、もっと別の問いを立てることも可能だ。
このまとめは幾重にも単純でやばい。
なぜなら端的に女性向け作品では、女性主人公に女性バディを組ませるものはけっこうあるからだ(『ファンタジーをほとんど知らない女子高生による異世界転移生活』では転生主人公と現地エルフのバディ、『転生少女はまず一歩からはじめたい』では転生幼児化と現地無口無骨ヒロインとのバディ、平均値では女冒険者PTもの、などなど)。
だが友達が相対的に出てこない路線もある。それを考えるとわかるのは、女性向けの二分状況は、恋愛ものなら友達が出てこない(友達は邪魔になるか裏切り要員に割り当てられる)、恋愛させないなら友達やシスターフッド路線が盛られる。このバイナリコードに気づく。
これが【男女でわりと傾向が違う。女向けでは恋愛か非恋愛かのバイナリーコード】で着陸させる案。
だが、このロマンスか非ロマンスで分かれるという、一見説得力がありそうな見立ても、考え直すと揺れてくる。なぜならロマンスだろうとなかろうと「下男・秘書・部下・執事・侍女との友好関係」なら、大半の作品で見られるからだ。
これが【同僚・上司部下・主従のカテゴリーと友達は排他的ではない】で別解を出す案。
すると、まとめの第一声の想定している「友達」なるものが学校生活や同級生を描く秩序を前提としているのではないか?という疑問に突き当たる。遡ると、少年誌のスポーツジャンルやバトルジャンルを暗黙に自明視して、それ以外を友達とみなしていないだけなのではないか?となる。
これは、【「友達」というイメージにジャンル秩序が先行している】という見解に整理される
なろう&異世界ものというのは、一面では男性向けでは青年誌ジャンルコードとの結合状態にある/女性向けではYA小説ジャンルコード(後宮や女官がまさに典型)との結合状態が起きており、現状での総合体制が見られる。そのなかで、「下男や侍女、部下を友達の延長で描く」はそもそも青年誌/女性誌などの技法でもある。
たとえば、島耕作に出てきた「友達」を即答できる人はいるだろうか。
とすると、青年誌/女性誌の同僚とか他社友人の書き方と比べて、不足点や、過去の技法の移植がまだ十分ではない点を指摘するとよりクリティカルなものとなるだろう。