日本の「戦争神経症」分析の話がどうも出てこない理由ってこれかー。呆然とするな。
(樫村愛子「トラウマと日本社会」、田中 雅一・松嶋 健 編『トラウマ研究 1 トラウマを生きる』京都大学学術出版会、2018)
“加害・被害の構図は複雑です。父の虐待に苦しんだAC女性たちの中には、「父はもう死んだから整理がつく。隣にいた母の方が、今も私を苦しめる」という思いを抱く人が、実は多い。「いつも不幸な顔をして娘である私に助けを求め、『あなたのために夫とは別れなかった』と言い、負の感情のはけ口を娘に向けてきた、あの母は何だったのか」と。
ACの一番の苦しみの源泉は父であり戦争だったはずなのに、共に暴力の被害者だった母こそが今の自分を最も支配し抑圧している。このような分かりづらい構図もあるんです。国が家族から男を総動員して引き離し、ボロボロになった男たちのケアは家族にやらせる。そして家族がボロボロになってしまう。”
こういう議論がやっと浸透しつつあるんだろうなあ。
"95年当時に40歳前後だった世代の女性たちが受けた虐待経験が、他の世代と比べて際立ってすさまじかったんです。
(…)
彼女たちに詳しく聞いていくと、多くは「父は戦争から帰って人格が変わり、ひどい酒飲みになって暴力を振るった」という話に行き着くんです。「むき出しの暴力性」とでも言えばいいのか。復員兵の家庭におけるDV・虐待は明らかに、その後の世代の家庭と質が違いました。"
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