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【木村勝千代独演会】2023年9月27日(日)14:00~15:50@アートスペース兜座

勝千代「甲州街道桃太郎伝説」
トークwith杉江松恋
~仲入り~
勝千代「壺坂霊験記」
曲師:広沢美舟

昨日の大きなホールでの大がかりな舞台とは打って変わって、20人だけが聴けるこじんまりした超贅沢な会。前回に続いて二度目の参加だったけど、席が少し後ろで空調に近かったせいか、前回より聞こえが悪かったのがちょっとだけ残念。次回はもうちょっと早く行って前に座ろう。

でも内容はとてもよかった。勝千代師匠といえば、東京ドームでもきっとマイクいらないようなその声量と、得も言われぬ細やかな、どうしてそんなふうに歌えるのという節回しの見事さ、天真爛漫でチャーミングなお人柄。啖呵も素敵。そんな魅力いっぱいの二席。

勝千代「甲州街道桃太郎伝説」
出身地である上野原に伝わる桃太郎伝説を勝千代師匠自身が浪曲化した新作。まず客席に「鬼退治するのとしないの、どっちがいい?」と訊き、わたしもふくめ鬼退治をしない派が多かったので今日は退治しないバージョン。きび団子を上げる前に、まず上野原名物の酒まんじゅうを食べさせると、なぜか犬猿雉がそれぞれしゃべりだすという展開が楽しい。雉になりきった迷演技のときに、あまりに可笑しくて曲師の美舟さんが思わず笑ってしまったのをオレは見逃さなかったよ。鬼が孤独から悪事に走った心情を吐露するところではぐっときた。最後は桃太郎も一緒に大月の人々に詫びて回ってハッピーエンド。途中、一行の移動の際に近隣の土地の名前や名物をテンポよく言い立てるくだり(道中づけというらしい)が可愛くて楽しかった。

トークwith杉江松恋
これがまた興味深かった。まず、勝千代師匠はどういうふうにして新作をつくるのか、という話。絵本や民話を題材にすることが多く、絵が浮かぶところ、心に訴えかけるところを節にするのだという。その超絶スゴイ節はどう練習を?の問いには、若い頃とにかく師匠にいわれたのは、「一曲全部セリフは『何が何して何とやら』だけで通す練習をせよ」というもの。言葉ではなく、節で感情を表現するためなのだそうだ。たとえば……といってやってみせた「泣き」の節がすごかった。言葉は何が何して何とやらなのに、胸がえぐられるくらいの悲しさが伝わってくる。鳥肌もの。

勝千代「壺坂霊験記」
浪花亭綾太郎という盲目の浪曲師が演じて一世を風靡した作品とのこと。「妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ~」というフレーズはわたしも聞いたことがあったが、その出典である話を聞くのは初めて。最後のほうを切り取ってぎゅっと短縮したのだけれど、はじめは盲目の夫の妻への想い、夫の自死を知ったあとの妻の想い、それぞれをもう「セツセツ」と音がするんじゃないかと思うほど切々と歌い上げて、ご本人曰く「関東節全開」だという(わたしにはまだよくわからないけど^^)節が複雑に細やかに千変万化する。こんなふうに歌えたらどんなに気持ちがいいだろうと、勝千代師匠を聞くたびに思う。最後は壺坂寺の観音様の力でハッピーエンド。互いの名前を呼び合って小躍りするさまが妙に可愛らしいのだが、大元の人形浄瑠璃でもそういうふうに可愛いのだそう。

最後は恒例の写真タイム。いろいろなポーズを次々にとって笑顔をふりまく勝千代師匠と、それを恥ずかしそうに見つめて笑う可憐な美舟さん。思わず十数枚もシャッター切っちゃったよw。

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