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「監獄経験を記すことは独裁政権によって引き裂かれることへの抵抗なのです。戦う相手は独裁であり、政治囚であり、また収監を強いる政治です。となれば監獄の物語や経験談をイデオロギーや神話から脱却させる必要があります。監獄が個性を消し去るのであれば、監獄について書くことは、その野蛮な腹を切り裂いて個々人の物語をひとつひとつ救いだすことです」

『シリア獄中獄外』ヤシーン・ハージュ・サーレハ
msz.co.jp/book/detail/08911/

「日本語版によせて」(抄)ウェブ公開
ヤシーン・ハージュ・サーレハ『シリア獄中獄外』岡崎弘樹訳 2020年6月25日
magazine.msz.co.jp/new/08911/

 “ナチズムは崩壊し、殺害や自決を免れた者は裁かれた。ポルポト政権は1979年にベトナムの占領によって崩壊し、 フツ族の支配も1994年に100日間で80万人の虐殺をおこなった数ヵ月後に終止符を打たれた。ところがシリアの場合、私の推定では60万から70万人を殺害している体制が生き残り、殺戮や拷問、強制追放を続けている。シリア国外の難民約660万人の状況も変わらず、そのうち欧州に避難した約100万人がいわゆる「難民危機」を引き起こしている。これらはすべてシリア領内における米露、イラン、トルコ、イスラエルの軍事プレゼンスによって、さらにイラクやレバノン、トルコの民兵組織、英仏の特殊部隊によってある種の国際的な後ろ盾を得ている。”

「日本語版によせて」(抄)ウェブ公開
ヤシーン・ハージュ・サーレハ『シリア獄中獄外』岡崎弘樹訳 2020年6月25日
magazine.msz.co.jp/new/08911/

 “本書によって日本の読者とはじめて出会うことから、「嬉しい」と言うべきだろう。だが、祖国が収監や亡命、強制失踪、親しき仲間の喪失などを経験している最中で「嬉しい」と言うことはむずかしい。にもかかわらず日本の読者には本書を通じて今日のシリアや世界に関して熟考し、知識を深めていただきたいと望んでいる。本書は嘆きやあきらめではなく、闘いのためのものだ。もはや諸国の運命はそれぞれ孤立していない。ある場所で生じていることが現在あるいは後に別の場所で影響を与えることは疑いない。ドイツでは「難民危機」が右翼ポピュリズム勢力「ドイツのための選択肢」(AfD)の伸張を促す要因となった。この現象はいっそう幅広い世界における右派の迷走の一環であり、今日、世界の問題はかつてないほど国際的に検討され対処される必要があることを示しているようだ。(…)”

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