金起林と李箱を取り上げた「旧正月の李箱の手紙」。

 “金起林が最晩年に発表した文章の一つ、「小説の破格」は、カミュの『ペスト』論である。「1950.4.10」と日付が入っており、朝鮮戦争勃発までわずか二か月ほどしかない。
(略)「ペストの町は占領下のフランスをのみ象徴するものではない」「自分の手で引き寄せたのではなく、知らぬ間にその中へ引きずり込まれてしまったこの電磁力の〈場〉としての人生で、人間たちはいったいどのように生きていけばよいのか」と書いた。
 『ペスト』を論じる金起林の目は、世界地図の中の自分の位相を見据えている。いうまでもなく朝鮮半島が、ソウルが、ペストの町だ。そして『ペスト』は、「この運命的な瞬間をどのように生きていくか、というより死んでいくかという問題を、寓意を借りて十全に分析検証する小説」であり、だから破格なのだと金起林は説いた。”
旧正月の李箱の手紙

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斎藤真理子iwanami.co.jp/smp/book/b631503

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 “朝鮮戦争が始まった直後、金起林は家族の避難先を探すためにソウルの自宅を出て、それきり消息を断った。四十二歳だった。夫人の回想によれば、人民服を着た若者らによって金起林が強制的にジープに乗せられるところを見たという目撃証言があったそうだ。”
旧正月の李箱の手紙

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