20230103 新刊に載せるので一部だけ(ルスハン)
俺は、まあせめてもの配慮で薄いのは残して、ぶ厚い遮光カーテンだけ開けることにした。
南側の壁面はほぼ全部が大きな「窓」だ。真ん中からゆっくりカーテンが開かれていき、本当はもう昼近いのに、まるで夜中のようだった部屋の中にカリフォルニアの強い日差しが筋になって入ってくるのを、そしてそいつがすぐにベッドの上に届く様子を、俺はブラッドリーの隣に横になってじっくり観察した。
「ん……」
もちろん俺たちは今休暇の真っ最中ではあるけど、でもせっかくのふたりきりの時間に、新婚ほやほやの夫より睡眠をとるなんてずいぶんな態度じゃないか?
確かに昨日は慣れない格好もしたし、式のあと店を借り切ってみんなで飲んで、海岸で踊って、俺たちがこの部屋にたどり着いたのはずいぶん遅くなったから、彼にとっては「たっぷり寝た」とはまだ言い難いのかもしれないけど。
「ブラッドリー」
部屋の中がすっかり明るくなっても彼が目を覚まさなかったので、俺はいよいよ面白くなってきた、と思った。
そっと、かろうじて腰のあたりにだけ掛かっていたシーツを静かに引っ張って取り払ってしまいながら、名前を呼んでも反応はなかった。
(Mothering Sunday)