日本一チケットの取れない落語家(と言われているらしい)春風亭一之輔の独演会に母を連れていった。なんと母は初見。1100人の入場者で一之輔のこと見たことも聞いたこともないつってんのあんただけだよと笑った。
面白かったのは出囃子『さつまさ』が流れたところで、小声で「昔、柳朝っていたよね?」と急に話しかけてきたこと。おいおい、『さつまさ』は元々柳朝の出囃子で、それを孫弟子の一之輔が引き継いだんだぞ? ひょっとして音がトリガーでその名前が出てきた?
だとしたら音と記憶のつながりの強さってやっぱヤバ過ぎる。
築50年超の古びたホールは、70代半ばを過ぎた足の悪い老婆にとっては難関でしかなかった。
二階席までの階段ですら苦行なのに、再奥に至るにつれて斜度が増すところでいよいよ母はほぼ四つん這いのような姿勢を取ることに。さながら登山のようだった。
だが登頂して見る景色は良かったらしく、ほっとする。