今日は知多半島の酒蔵へ買い物に行き、帰り道に常滑焼メインの器の店に寄った休日だった。
「ペタライトですよ。マジやばいです」
と悔しさの混じった声で焼き物屋の主人が話しかけてきた。
日本で流通する国内産土鍋の八割近くが三重県の萬古焼なのだそうだ。彼らはより耐熱性の優れた土鍋を作ろうとしてペタライトという素材を練り込んだ。昭和三十年代の頃らしい。
ペタライトは熱膨張率がとても低いので、土鍋を強い火にかけても割れにくくなるということで、それは大いに能力を発揮した。
ところが、今そのペタライトの価格が高騰化していて、全く採算の合わない金額になってしまっているという。
だから見つけたら即購入しなさいという売り文句なのかと思ったが、そうではなかったらしい。
主人は「日本じゃ底の焼けた土鍋なんて中古屋で見かけることはないけど、見かけたら中古でも買っておくべきです」と力説した。
高騰化の理由はリチウムだった。ペタライトの科学組成はLiAlSi4O10、つまりリチウムを含む。
EVや携帯電話に始まるリチウムイオン電池への需要の高まりが、含有率4%のこの鉱石へと目を向けた。
最後に主人は言った。
「だからね、僕、親を説得して仕入れられるだけ仕入れたんです。でも残りは今店頭にあるだけですよ」
やっぱそうだったか。