僕の古い友人さおりがひとりメキシコ旅行のさなか、長距離バスで移動していた時のことを僕に語ってくれた。
永遠に終わらないんじゃないかと思えてくる長距離の移動とひどい車の揺れ、それに降りしきる雨が窓ガラスを叩く音に疲れて、彼女はイヤホンをつける。
再生ボタンを押した時流れてきたのはヴェルヴェッツの『サンデーモーニング』だった。
「今振り返っても人生で最高の瞬間のひとつだよ。夜が明けて予定時刻になってもまだ森の中を走ってるバスに心底疲れててさ。でもこれが流れてきたら、急にいろんなことを受け入れられるようになったのね。楽しめるようになったというか。残念ながら、その朝は日曜じゃなかったんだけどね」さおりは笑った’。
以来この曲を僕が聴く時は必ず、メキシコの雨の朝、バスの車窓が常に目の裏に浮かぶようになった。
目に見える景色を一瞬で変えてしまえるところ。気分を全く違うものにしてしまえるところ。それどころか自分じゃない人の私的な思い出まで共有できるだなんて音楽とはなんと面白いんだろう。

The Velvet Underground, Nico - Sunday Morning
youtu.be/Xhbyj8pqUao

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今このリンクをクリックした人が、さおりの思い出をもしかしたら擬似体験してるかもしれないって思うと、それも不思議で素敵な音楽のちからだなーって思ってます。愉しい

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