〈収録作品〉★書き下ろし/初公開
・ヴィタ・アルモニカ
・アラベスクのコーダ
・魚の日
・微睡む塔のエフィジー
・ヘスペリデスの石庭★
・漂光の竟玥★
・閾《Liminal》
・彁翼環胎
・殕花遺説★
・爛雪記
↓以下に作品紹介を続けます。
「微睡む塔のエフィジー」
anon press掲載作。幻想百合SF。
〝先生〟にまつわる幻惑的な回想の群れ。先生は偏在し、建築家であり、滅びた王国の女王でもある。先生は決して描かれることがなく、故に永遠というものによく似ている。〝私〟は先生を追い、求め、その関わりの内に自らの衝動の在処を悟る。
「ヘスペリデスの石庭」★百合SF
黄昏の名を冠する惑星には、感染の危険を持ちながら生薬の原料となる苔がある。「枯石移植」の専門家:沙雁遺は、惑星基地で二週間後の契約期限を控える中、親密だった包鐘繭臾の自死に直面する。原因究明に乗り出した沙雁は、黄昏の石庭に魂の行方を見出していく。
「漂光の竟玥」★幻想百合
忘れ去られた森の奥に〈漂本箱〉と呼ばれる館がある。〈金竟の魔女〉が住まうその館には、滅びた結晶都市における魔術師と〈静謐騎士〉の逸話があった。
砕かれた鏡の欠片、玥(つき)を象る金の鈴、それらは流浪の運命に導かれ、宇宙と森の静謐に再会の音を響かせる。
「閾《Liminal》」
anon press掲載。
リミナルスペース散文詩。地下鉄に乗る必要がある。連結部分を見つめている。眠る家を探している。存在の境界=閾を歩みながら、私たちはどこから来たのかと自問している。私たちは迷い続ける。だからどうか、私のことを探してください。
「彁翼環胎」
anon press掲載。幻想百合SF。
円形都市の薬師、芣泫(ふけん)は角を持ち都市の縁に現れる「丱彁(かか)」に波彁霜樹(はかそうじゅ)を植えて薬をつくる。ある時、ひとりの丱彁に心奪われ丯胞(かいえ)と名付けたところから、芣泫の閉じた永遠は狂い始める。
「殕花遺説」★表題作
モノクロの円形都市で弔綵師(ちょうざいし)を担う焮綪啝(きんせんか)は、都市を治める盲目の少女饗皇(きょうこう)から家庭教師を任じられる。綪啝は少女の願いを叶えるべく奮闘し、都市と世界の真実を目の当たりにする。
色と終末、祈りにまつわる百合SF(ファンタジー)。
「爛雪記」
BFC3本戦出場。
季節を司る四柱の神、桜姫、燈帝、爛王、雪妃と、巡る世界にまつわる掌編。憂いのままに自らを腐らせ、大地に恵みをもたらす爛王は、盲目にして凍える静寂を司る雪妃に、孤独を慰める詩を送る。何度でも何度でも、季節が巡り出会うたびに、二人は互いを思い合う。
「ヴィタ・アルモニカ」
LIXIL未来共創計画最優秀賞。百合SF。
研究者の明彷静は〈音律性生命環境(ヴィタ・アルモニカ)〉による都市開発を推進していたが、計画は頓挫、感染症の流行で都市ごと放棄される。7年後、投棄都市での緑地拡大を知った明は、観測員として帰郷を決意する。
「アラベスクのコーダ」
anon press掲載作。百合SF。
現解舞踏(エクソダンス)のプロ選手だった鴻渚(おおとりなぎさ)は、現役引退後、地下のライブハウスで踊る日々を過ごしていた。〈繋象儀(ブリッジ)〉がもたらす共感の幻の中で、 かつてバディであった女性との栄光と悲しみに思いを馳せる。
「魚の日」
サークル磔刑『解放区第二号』。百合SF。
とある理由から海辺の街にやってきた〝私〟とパートナーのリタは、街で神話にまつわる祭りが行われることを知る。夕食に肉と魚を交互に食べる習慣を繰り返しつつ、母なる海を通じて〝私〟はリタが抱える痛みと自身の罪へと直面していく。