追いかけてくる気配を感じるが捕まるほど間抜けではないし姿だって見られてない自信がある。そしてこの状況で喧嘩を続けるほどあの人も馬鹿ではないだろう。いや、どうでもいいんだけどね。
次の日、部室に行こうとすると向こうから三井サンが歩いてくるのが見えた。俺も三井サンも一人で、こういう時は声をかけてこないので目線を合わせにようにしながらすれ違う。しかし今日は「おい。」と声をかけられる。因縁をつけられるのは面倒だなと思ったが俺の返事を待つこともなく「落とし物だ。」と言いながら何かを放り投げてきた。俺は反射的にそれをキャッチする。それは擦り傷と一部へこみが入ったポカリの缶だった。
「な!?」
思わず驚いた声を出してしまった俺に、悪戯が成功したとばかりに軽く笑い声を上げて三井サンはそのままスタスタ歩き去っていった。