「いやいやアンタ、グレてた時に何してたの?」
悔しいが顔がいいことは認めざるを得ないこの先輩がグレているときに女関係で色々あったとしてもおかしくないと思っていたのだがそうではないらしい。
「うるせーな!徳男達と遊んでる方が楽しかったんだよ!」
三井サンの言葉に堀田さん達が、三っちゃーん!と野太い歓喜の声を上げるので、
「ま、アンタは女より男にモテてるもんなぁー。」と笑ってやった。
「モテてねーわ!男とのキスなんてノーカンだからな!」
突然の爆弾発言に屋上の空気が凍った。
「待って、三っちゃん、そんな話初めて聞くけど!?」と泣きながら詰め寄る堀田さん達を押し退けて、「マジで男とはあるの?」と興味津々で俺は尋ねた。
「グレ始めた頃とかちょいちょいあったなー。完全にナメられてたし揶揄われてたんだな。」
三井サンは本当になんでもないことのようにそう言った。時々感じるがこの人の感覚はちょっとズレてるとこがある。それとも虚勢なのか。俺はちょっと確かめたくなって、頭突きをかましたことのある三井サンのその口に、ちゅっと口付けてしまった。
「これもノーカンっすか?」
俺の問いに、
「おお、ノーカンだな。」とケロッとした顔で答えた。マジか。(ここで堀田さん達がまた何やら叫んでいたがちょっと省略)
「ノーカンだけど、なんでお前にいまされてんのかはちょっと不思議なんだが?」
三井サンの台詞に俺だって自分でも何やってんだと思った。なんで三井サンに…
「あーーーーーーっ!!!」
俺は大声で叫びながら地面に突っ伏した。いや、ちょっと待って、待って信じらんない。俺はなんでファーストキスを三井サンなんかにしちゃったの!?死にたい、ここから消えたいっ!!
俺の言葉に堀田さん達は今度は大爆笑し始める。くそー、笑うなら笑えよ。ファーストキスは彩ちゃんとと決めてたのに(付き合ってもいないけど)なんでよりにもよってこの人にしちゃったんだよ俺!
そんな俺の肩を叩きながら三井サンは、
「ほら、こんな時こそ男相手はノーカンの法則だぜ。」
と言って、がははと笑った。
この時ほど三井サンの鋼のメンタルが羨ましいと思ったことはなかった。