「野又穫 Continuum 想像の語彙」の感想 

会期が明日(9月24日)まででたしか巡回はしない展示なのですが、東京オペラシティアートギャラリーで展示中の「野又穫 Continuum」の感想を書いておきます。

野又さんはキャリアの初期(1980年代後半)、広告代理店でデザインの仕事をするかたわら空想建築物の絵を描きはじめ、ときどきにテーマを変えつつも、巨大で用途のわからない空想建築物を正面に捉えた、リアルなタッチの絵を描きつづけています。
90年代後半から2000年代のあたりの絵を、装画などで見かけることがあるかもしれません。有名なところでは1995年から2005年の「文學界」の表紙絵( onl.tw/8bVkHqC )や、伊坂幸太郎「モダンタイムス」講談社文庫。
光が灯っている絵もあるので、それには人の存在を感じますが、基本的には無人で、地球上の人間の手では建てられなさそうな建築物が多く、背景や描かれていないものへの想像力が膨らみます。
温室やガラスドームの水族館のような建築物の絵は、描かれた階段を上がってみたい気持ちになります。風を感じる帆や気球、風車のついた建築物の絵は、決してここから動けはしない建築物の旅立ちの夢を描いているようです。

「野又穫 Continuum 想像の語彙」の感想 つづき 

代表的な作品以外でも目についたものが何点もありました。
「Point of View-24」は珍しく、実際にありそうなシンプルな建物(テント)で、薄い雲に覆われた空が大半を占める構図が、これから建てられるものがあるのかもしれないと想像させ、長く眺めました。
「listen to the tales」は渋谷を思わせる街並みが白く石化して廃墟になってしまったように見え、手前にハチ公像らしきものと何匹もの犬、街中にも崩れかけの動物の彫像のようなものや犬たちが点在しています。薄青く静かで、これから全部消えていくだけ、といった一種の平和さを感じました。
「blue construction」シリーズには、懐かしさを感じる他の絵と毛色が違って、未来を思わせる過度に無機質な空気がありました。
2023年に描かれた最新の作品「Continuum」のシリーズは、これまで以上になんの建物かわからないもの、有機的なフォルムを持ったものなどがあります。実際の建築はかならず用途があるから、それがなさそうなものを絵で見せられると無性にワクワクしてしまいます。異様さにも惹かれるんでしょう。

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「野又穫 Continuum 想像の語彙」の感想 余談 

余談なのですが、画集に載っている「Imagine-2」と会場に展示されていた作品が違う、というか会場のはさらに描き加えられているような気がします。会場の絵では、遊園地のような建物群に文字らしき掲示物や、足元にはうさぎっぽい形の生き物(かオブジェ)がいます。画集のほうは掲示物も少ないし、足元には動物の影がすこしあるくらいで、誰もいない感じが強い。画集に載せられたほうは撮影したのがかなり前で、そのあと描き加えたとかでしょうか。

「野又穫 Continuum 想像力の語彙」
@東京オペラシティアートギャラリー(東京・初台)
2023.07.06.-2023.09.24

operacity.jp/ag/exh264/

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