『君たちはどう生きるか』感想
いろんなお母さん大集合!!!!(恐怖)
これジブリ映画で観たことある!という構図やシチュエーションがたくさんあった。すごい。セルフオマージュ。
それはそれとして、お母さんのはなしをしてもいいですか?(恐怖)ジブリ作品にはいろんな「母」が登場し「母」の描き方(そしてその執着)については今更言及してもなと思いつつ、それにしてもいろんな「お母さん」像が大集合しすぎでは!!???すごかった。こっちもお母さんだしあっちもお母さんだし、えっ!!??あなたもお母さん!?こわ……すご……。はなしをしてもいいですか?と言いつつ何も言えないや……すごいな……意識してるのか無意識なのかわからないが無意識だったら怖すぎるからわかってやっててほしい。自覚的であってほしい。
『君たちはどう生きるか』夏子さん
眞人→夏子さんへの感情はかなり「恋慕」に近いと思った。わたしはめちゃくちゃエディプス・コンプレックスを感じてしまった。
夏子さん→眞人の「大嫌い」はだから「恋慕」が断ち切られたということ?とも思ったが、夏子さんも「塔」の世界へ逃げ込んだのではと考えると夏子さんの不安もわかる。眞人に「大嫌い」と言うくらいに、逃げたいほど「帰りたくない」と望むほどに現実は苦しかったのだろうなと想像する。姉の夫と結婚式し、姉の子を「自分の子供」として愛さなければならない。あと、はっきりとは描かれてなかったけど、もしかして夏子さんは夫を亡くしているのかも?と思った。わざわざ車を降り軍人を見送るシーン。夏子さんの夫も戦死したのかもしれないと想像した。でも、夫になる人は戦争でお商売をしており、戦場の悲惨さに無頓着なようすで食卓では儲け話をする人。姉の子供は自分には愛想がなくよそよそしくて、その子に怪我をさせてしまったし(姉に申し訳がない)自分自身も出産をひかえている。夏子さんの人生を考えてしまう。
『君たちはどう生きるか』インコ
別に人間を食べなくても良さそう(厨房では野菜を調理していたし、飲み屋っぽい店もあって、少なくともペリカンのように「飢えて」はいないようだった)だがインコは人を食う。大叔父が持ち込んで数が増えてしまったインコ。ペリカンたちも「連れてこられた」と言っていたが、インコは塔の中で生活をしてひしめき合って生き王を盲信し「塔を寄越せ」と言う。インコとペリカンの違いは、インコが「飛べない」ことに危機感を持っていないところかなと思った。(ペリカンは「次の世代は飛べないかも」と嘆いていた。「世界の仕組みがおかしいとわかっているのに結局はその仕組みに従わなければ生きていけない」ペリカン。みにおぼえがある悔しさと無念)
インコ=作品のファンのメタファーなのかな?と思った。私達ファンは塔を埋め尽くし居座り、子供(次の世代)すら食べ尽くし、もはや飛ぶことすら重要ではない。
インコの王は「こんな石に世界を託していたのか」云々と激怒していたが、いやもとから石なんですよ……みたいな。勝手に高尚なものとして祭り上げて「裏切りだーー!」と凸るファンみたいだな……と思いながらみていた。
『君たちはどう生きるか』インコ2
あと「大叔父の血族じゃないとダメ」みたいなのも宮崎駿を継ぐのも血族じゃないととかジブリ直系の人間じゃないと的なしがらみの話なのかなと。
とにかく、インコの描写は興味深かった。最後、塔から逃げ出したインコたちは空を飛んで行く。外に出て飛びなさいよ、と言われている気がした。
『君たちはどう生きるか』全体的に2
わたしの中にはすごく「罪悪感」があり、それに呼応する部分だけを拾ってしまい苦しかった。好きに自由に生きていいよとわたしたちは子どもたちに伝えるが、この世界で自由に生きる難しさもしんどさもわかっており、でもそう言うしかない。そう言いたい。言いたいけれどでも、という葛藤と罪悪感がある。画面いっぱいに広がる色彩とアニメーションからは「世界は美しいでしょう」という喜びとときめきを感じたが、一方で食う食われる残酷さや傷や汚れや崩壊も描かれていた。わたしはもう「ジブリ映画だ」と認識しながらこの映画を観てしまってて、フィルターがかかった状態で映画と向き合っている(映画に描かれていない要素を勝手に映画に盛り込んで解釈をしてわかろうとしている)から、そうじゃない人が、それこそ子供がこの映画を観たときにどう感じるのかな。
『君たちはどう生きるか』モチーフ
アーノルド・ベックリンを思い出したというひとのお話をきいて、たしかに……!となった。
https://www.meisterdrucke.jp/artist/Arnold-Böcklin.html
『君たちはどう生きるか』終わり方
不思議なことは起こらず、希望に満ちてはおらず、「おわり」の幕引きもなくて、放り出されたような感覚になる終わり方だった。君たちは現実世界を生きるんやで……ということかと思いますが。
レオス・カラックス監督の『アネット』だと、エンドロールで「映画に付き合ってくれてありがとう〜!気をつけて現実世界に帰るんだよ〜!」とお見送りをされてしまうんですが、『アネット』はそこけっこうおもろかったしすごかったし監督の優しさを感じたよね……