ヌードモデルしてる清光くんと画家先生…

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ヌードモデルしてる清光くんと画家先生(b) 

「ヌードモデルをしてくれないか」
憎らしいくらい美しい顔のその男は、開口一番そう言った。
「は?」
それはなんのプレイですか???

清光くんは美術の美の字も知らぬ、貧しい男娼のひとりだった。
うら寂しい路地の片隅に、半分崩れたように立っている店。そんなでも客はあるもので、なんとか男一人生きていけるくらいの稼ぎはあった。
その日清光くんを指名した男はどう見ても日本人じゃなくて、しかもこんな場末の店には全く似つかわしくない、仕立ての良い服を身に纏っていた。
物好きな観光客…?にしてもこんな裏通りに?
頭の中ではてなが飛び交う清光くんを前に、男が口にしたのはおよそ想像もしなかった台詞だった。
「ヌードモデルを、してくれないか」
清光くんが呆然としてるものだから、男はもう一度、同じ言葉を繰り返した。
頭の中で一生懸命咀嚼して…そのうちに、清光くんはだんだんと腹が立ってきた。
「馬鹿にすんなよ」
驚いたふうの男を押し倒して、噛み付くようにキスをする。
「金持ちだかなんだか知らないけどさ、俺はこうやって生きてんの。あんた、わかってて指名したんだよね?だったらさっさとやることやって金払えよ」

ヌードモデルしてる清光くんと画家先生(b) 

男からしたら、支離滅裂でとんでもなく理不尽に聞こえたと思う。
だけど清光くんは真剣だった。泣きたかった。
金持ちの道楽に付き合う、それはいつもの仕事だって変わらない。けどなんだか今のこの生き方を、憐れまれたような気がして。
確かにしたくてしてる仕事じゃない。他に道なんてなかった。だけど。
だったら同じことだろう?こっちのほうが遥かにマシじゃないか。
そう言われた気がして。
それは違う。これしかなかったけれど、清光くんは誇りを持ってこの仕事をしている。
「…悪かった」
男は静かに謝罪した。泣きたくなるくらい優しい声だった。
その日はとんでもなく優しくされて、清光くんは何度も泣いた。
そのうちに、この男のことが知りたくなった。
「ねえ」
シャツのボタンを留め始めた男に、背中を向けながら声をかける。
「なんで、あんなこと言ったの」
男は手を止め、こちらを見たようだった。
「そうだなぁ…」
笑みの形に、空気が揺れて。
「お前さんが、後の世に残したくなるほど美しかったからな」

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