『ユー・ガット・ミー・シンギング』について三浦久の「訳者ノート」より抜粋①
この歌はコーエンの傑作に対応している。The only song I ever had, The Hallelujah hymn, The Hallelujah songはいずれも「ハレルヤ」のことである。最後のThe Hallelujah songはブックレットに書かれていないが、実際には最後の部分で3番と4番が繰り返されている。しかし、4番の歌詞は最後のヴァースでは2行目がEven tho it all looks grimがEven tho all went wrongに変えられ、4行目がThe Hallelujah hymnからThe Hallelujah songに変えられている。当然のことながらwrongとsongの韻を踏むためである。
いずれにしろ、「すべてはあまりに悲惨なのに」「すべて壊滅的に悪くなってしまったのに」という2行目で、コーエンは、イスラエルとパレスティナの果てしない報復合戦を含む、世界が現在置かれている悲惨な状況を指摘している。彼は前述のマイケル・ギルモアとの対話の中で、世界はこれから崩壊するのではなく、すでに崩壊していると述べている。