『激怒』(1936、フリッツ・ラング)

これはめちゃめちゃ面白かった。亡命ドイツ人ラングのハリウッド第1作。

婚約者(シルビア・シドニー)との結婚資金がようやく貯まりウキウキで買ったばかりの車に乗って彼女の元に向かう主人公ジョー(スペンサー・トレーシー)を誘拐犯人捜索中の保安官助手が呼び止める。ジョーが些細な根拠で逮捕勾留されるとあっという間に町に噂が広まるが、証拠もなく勾留が長引くと苛立ち始めた町民が保安官事務所に集まり暴徒化、破壊・放火するに至る。
状況を知った婚約者の目の前で拘置所の窓の鉄格子の向こうでジョーは炎に包まれる。
しかし、その後誘拐犯の真犯人が逮捕されジョーが冤罪だったことが明らかになると、今度は暴動に参加した22人の市民がリンチ殺人の罪で裁判にかけられる。
その裁判の最中、ジョーの二人の弟の元にジョーが突然現れる。炎の中脱出した彼は火傷を負い潜伏する間に保安官と暴徒への怒りのため別人のように人格が一変していた。。。
とここまで、怒涛の展開。ジョーの変貌を演じるトレーシーの演技がすごい。ラング映画は夜の何というわけでもない街の風景になんとも言いようのない空気感が現れる瞬間があって好きです。

あと、良い犬映画です、これ。

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その私刑殺人の裁判の中で担当検事のセリフに、年間6千何件の私刑事件が起こっているがそのうち起訴され処罰されるのは7百何十件だけだ、なんていうのがあって、その当時の私刑事件っていうときっと被害者のほとんどは黒人だったろうなと当然思うし、関東大震災を連想したりもする。

それとは別に、悪に堕ちるスペンサー・トレーシーの姿はまるで近年のアメコミ映画のヴィランのプロトタイプみたいでとても興味深い。

主人公を冤罪に陥れる保安官助手はウォルター・ブレナンでいい加減な男を演じていて上手いけど、銃を構えて見せるとなんとなく不気味。

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