『悪い種子』(1934、ビリー・ワイルダー)
ハリウッドを代表する喜劇映画作家の一人、と思って見始めたらなんとフランス映画だった。亡命ドイツ人というのは知ってたけどフランスでデビュー作を撮ってたのは知らなかった。なかなかよかったです。
金持ちの医者の息子である主人公、車が好きで働かず遊び回ってるを見かねた父親がある日大事な車を取り上げる。前日にナンパした女の子との待ち合わせ場所に向かってトボトボ歩いていると、目の前に止まった車が鍵をつけたまま人がいなくなったのを見て出来心で乗り逃げ。すると後から別な車のよくわからない連中が追跡してきて追い詰められ、車ごと自動車整備工場のようなところに連れてこられる。「うちのシマで車を盗むとは上等じゃねえか。あの車はうちで買い取ってやるから2度とウロチョロするな」とその自動車窃盗団のボスに突きつけられた金の受け取りを拒む主人公。その態度に何か感じるところがあったのか、「なんならウチで働くか」と持ちかけられると、何を思ったかそれに応じで一味に加わる。
すぐにセットから屋外に出て、実風景の中を車や徒歩や荷車なんかで移動しながら話が進むところなんかは後のヌーヴェルヴァーグのような新鮮さがある。ハリウッド的喜劇の有名監督とは全然別な顔があった。驚き。

俳優たちにハッとするような力がないのが物足りないところと言えなくもないけど。ちょっと面白いのが、自動車窃盗団一味の中にアフリカ系の人が一人入っていて、ハリウッド的ステレオタイプな黒人像とは違う普通な感じでいたところ。同時期のフランス映画にアフリカ系の人自体を滅多に見ないのにね。

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このアフリカ系フランス人は、自動車整備工場では窃盗団の一味と一緒に盗品の車の塗装や整備、ナンバープレートの付け替えなどをやっていて、窃盗の段になるといかにも金持ちの黒人運転手と言った姿に”変装”して出かけて行くのである。

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