いつか描きたい(67妄想)②
「それは認められません」
「どうして貴方が決めるんですか?彼女が選ぶんですよね」
「えっと、私はドーランで夢があります」
「ええ、その夢を妨げたりはしませんよ」
「でも、私は平民で…」
「この国ではドーランと違い貴族外婚は認められています。何も心配はいりません」
ハーレの夢も、ドーランを離れることを想定してないナナリーはどうしていきなりそんな話に?って混乱する。
目の前にいるのはロックマンのはずなのに無表情で何を考えているのかわからない。
しばらくロックマンと睨み合っていた貴族の男はフフっと声を出して笑う。
「噂は本当のようですね」
「噂?」
「火の始祖級でありドーラン、ひいては大陸で今1番力ある魔法使いと言われているアルウェス・ロックマン殿は氷の魔女殿を溺愛しているとか」
「で、溺…?!」
すごい言葉が出てきたと飛び跳ねるナナリー。たしかに、お互い告白しあった仲ではあるが、相変わらずの飯食い友達程度の付き合いしかなかったはずなのにどうして?!っとさらに混乱する。
すると、腰を抱かれて反対側に引き寄せられる。
「そこまでご存知でしたら、世迷言を言ってないで彼女は返してもらいますね」
いつか描きたい(67妄想)③
何を言っているんだと!私たちは飯食い友達だ!と否定しようとしたら口からはモゴモゴという音しか漏れなかった。閉口術だ。
「彼女を誰にも渡すつもりも諦めるつもりもないんでね」
「この国には氷型は少なくて。私は貴族では唯一の氷型だったんです。私とナナリーさんが結婚して、子を成せば…」
「それはないです」
弾けそうな緊張感。いつの間にか閉口術は解けていた。
それでも、私が好きなのはロックマンで、私以外とキスする予定があるとか、そういうことが気になるのもロックマンだけだから。
「だから、私は貴方の婚約者にはなれません」
「おやおや、脈ありかと思ってたんですがね」
夜会が終わり今日は泊まって明日以降帰国することになったが、腰を抱いたロックマンは離してくれなくて、そのまま客間に入ってナナリーを抱きしめる。
「心配したんだ」
「こんなところまで来てくれてありがとう…」
「どこにいたって見つけるよ。君はとても目立つしね」
「…あと、あの…さっきの」
言葉は恥ずかしくて出てこない。
「あれはすべて僕の本心だから」
忘れないでいてね。とロックマンの抱きしめる力が強くなる。
苦しいけれど、好きな香りにもう少しだけ包まれていたくてそっと息を吸い込んだ。