あなたのいちばん❷
頭の痛くなる話だった。
ゴシップどころの話ではない。
事実無根であるし、会ったこともないのに人物との縁談をでっち上げられあまつさえ結婚などと。
そして、その話題が狙ったかのようにヘルとの交際がはじまった今になって出されていることも腹立たしいことだった。
あの記事が出てから、ヘルから何もなかった。
直ぐに会いに行って誤解だと伝えることは簡単だったが、彼女の安全の確保は絶対にしなければならないし、虚偽だと無視するにはきな臭い噂も聞こえてきていたから。
それらを片付けて1週間。想定よりも長く掛かってしまった。やっと彼女の元に会いに行けば特に感情の読めない顔で一言「1発殴らせなさい」と言ったのだった。
「ヘル、あれは…」
誤解を解いてしまえば今まで通りと思っていたのに、説明する僕の言葉を遮るヘル。
「婚約者がいるのに、私なんかにちょっかい掛けるなんて、婚約者に失礼じゃない。そんなに最低なやつだったなんて見損なったわ」
考える時間はたくさんあったのだろう。
彼女は彼女の答えを出したあとだった。
そして、気まぐれは自分の方だと思ってる。
どんなに伝えても僕のすべてはきみのものだとヘルには伝わらないことがもどかしかった。