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あなたのいちばん❶ 

《金の貴公子アルウェス・ロックマン、隣国の第二王女と婚約》
そんな見出しの魔法新聞がドーラン中を駆け巡った。
そして、元同級生で万年隣の席で、何かと腐れ縁でよく出会うそのロックマンとつい半年前に恋人という立場になっていた私はその新聞を見て、何もしなかった。
周りは気を遣うように「大丈夫よ、あの隊長さんだもの。ナナリー以外とありえないわ」「そうですよ、ヘル先輩!きっと何かの間違いですぐに金の王子様は先輩の元に言い訳に来ます!」と言ってくれる。
そうして、仕事で訪れたロックマンに主語も何もかも吹っ飛ばして一言「1発、殴らせなさい」と言ったのだった。

あなたのいちばん❷ 

頭の痛くなる話だった。
ゴシップどころの話ではない。
事実無根であるし、会ったこともないのに人物との縁談をでっち上げられあまつさえ結婚などと。
そして、その話題が狙ったかのようにヘルとの交際がはじまった今になって出されていることも腹立たしいことだった。
あの記事が出てから、ヘルから何もなかった。
直ぐに会いに行って誤解だと伝えることは簡単だったが、彼女の安全の確保は絶対にしなければならないし、虚偽だと無視するにはきな臭い噂も聞こえてきていたから。
それらを片付けて1週間。想定よりも長く掛かってしまった。やっと彼女の元に会いに行けば特に感情の読めない顔で一言「1発殴らせなさい」と言ったのだった。
「ヘル、あれは…」
誤解を解いてしまえば今まで通りと思っていたのに、説明する僕の言葉を遮るヘル。
「婚約者がいるのに、私なんかにちょっかい掛けるなんて、婚約者に失礼じゃない。そんなに最低なやつだったなんて見損なったわ」
考える時間はたくさんあったのだろう。
彼女は彼女の答えを出したあとだった。
そして、気まぐれは自分の方だと思ってる。
どんなに伝えても僕のすべてはきみのものだとヘルには伝わらないことがもどかしかった。

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