「流れる季節を私は碌に拾いもせず」
ここでまずやられました。心ここにあらずといった空気が、あまりにも情感豊かに表現されていて。
「足が縺れ転ぶ先に孤独」
酔って転ぶ、それを支える人もない。ゾクッとするほどに孤独で、それなのにどこか軽い。
悲しいとも淋しいとも言われないからこそ、この一言が強く刺さります。
「貴方が棄てた私には肉も骨もありますから」
人間であること、感情があること。「肉も骨もある」と表現するの凄まじい……
生々しい説得力を感じるのに、音が綺麗なのですっと入ってくるんです……
「飢えも乾きも手紙如きでどうにかなると思わないで頂戴な」
手紙如きが良いです……
しっとりとまとわりつくような情念。
何を望むわけでもないけれど、その深さが感じられるようです。
「部屋に籠ってダバダバ」
滑稽で楽しそうですらあるのに、だからこそ哀愁が感じられるんです。
そのような擬音で表現する、どこか冷静で客観的な自分がいる。それが余計に淋しい。
「私と素面の春」
そしてこれですよ……
夜の街灯に照らされた自分と春。
酔った自分と素面の春。
みじめさが際立つようで、どこまでも綺麗で。
「のをあある とをあある やわあ」
萩原朔太郎を思い出すようです