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上橋菜穂子『獣の奏者 I 闘蛇編』読了。
細々としたお仕事の描写、架空の生き物のお世話だったり、溢れる光とともに描かれる養蜂の様子が楽しい。どんなものを食べているかもうちょっと知りたいけれど、主人公の興味は食べ物にはあんまり向いてないんだよな。

生き物を飼うのは、生き物の生き方を矯めるのは(もっと突っ込んで言えば去勢なんですが)、それは良くないことだよね、という考えが底流にあるのですが、そうは言うても人の世の現状というのは家畜や愛玩動物なくて成り立たないので、この罪をどう昇華したものか。
人間は人間を人間として教育することで、人間を家畜化してるよなと思ったり。

『獣の奏者 II 王獣編』読了。
終末物みたいな終わり方しやがって!この後どうなるんだよ!(続編はあります)

終盤、主人公が大きな流れに巻き込まれて、話の主導権が主人公から離れてしまったのは、不満と言えば不満です。
物語の導入部から主人公が自らの意志で選べたことなんてほとんどなかったんですが、何故終盤で話の流れが主人公から離れたと感じたんだろう?

王権イコール神性で、神代の霧がまだ漂っているような物語の舞台設定は大好きです。
信じてきた信仰が、人為的な意図を持って創出されたものという設定も大好きです。
血と泥と阿鼻叫喚の中、神話の時代の終わり告げて物語は幕を閉じるのですが、だからこの後どうなるんだよ!
漫画版ナウシカのラスト1コマのエピローグ、あれはとても大事だったんだな。

過去の惨禍を繰り返さぬために、禁忌を設けて人を縛っても、好奇心を持って知らずその禁忌を破る者は出てくる。
一度見出された技術は、己に利するために恣意的に乱用する者は出てくる。
といった難しい課題も提示されているのですが、それに対する答えは出せないままで。
人の心を、可能性を、技術を、恐怖で戒めるのは間違っていると主人公は反論するのですが、じゃあ過ちを犯さないためにはどうしたらいいんだよってのは、この話では答えは出ない。

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