昼間、体調が悪くて横になっていた時に見た夢
乗っているのは殺風景な普通列車なのに空間が変で、わたしが座っている席は二人掛け・前の席は横一列の四人掛けに通路を挟んでまた二人掛け・そのまた前は三人掛けという歪さ。だが雑草の生い茂る線路という車窓の風景は現実のこの近辺でよく見るものだ。やがて駅(現実にわたしの住むその駅名が柱に書いてある
)が近付いて、だが列車は止まらずにそのまま通り過ぎていき、一瞬焦るものの、ああ、次の駅が本当の○○駅だからな、と妙な納得の仕方をして、次の駅に到着したら他の乗客と一緒に列車を降り、大半がホームの真ん中の大階段を上がっていくのに、わたしはそのままどんどんホームを進んで、いつのまにか未舗装の緩やかな坂道を上がっていく。
頭上を覆う木々の葉先は染め分けたように真ん中から赤く色づき、道の両側は緑豊かで、見慣れない花が目に入るたびに写真を撮ってSNSにあげたいと思うけど、今は急がなきゃいけないからあとで戻ってこようとおもう。誰もいない道はつづら折りのように上っては下り、ある箇所では道の向こうにセットのような部屋が並んでいて、ある部屋では戦武将のなりをした人物が部屋の真ん中大の字になっていて、その隣の部屋では平安朝の、文官か貴族か、それふうの装いをした二人の人物が額を寄せあっている。
ああ、ドラマで人気が出たからこの施設にもそれらしい役者を配しているんだな、それにしてももう閉館時間だろうにぎりぎりまで役になり切っているのだな、などと思いながら通り過ぎる。そういえば列車の中から見た空は夕暮れだったのに、ここでは太陽は傾いているとはいえまだまだ十分に明るい。改札を出てからまた戻ってきても充分写真を撮れるぐらいの時間はあるな、とおもうほどに。なぜそんなに写真を撮りたいと思うのだろう。そしてまたつぎの下り道へと差し掛かる角に、彼岸花の花をひっぱいにつけた低木があり、わぁこれは珍しいと思いながらも足を止めずに角を曲がり道を進んで、やがて坂のてっぺんから下り道を見おろすと未舗装の道の終わりがシームレスに駅のコンコースへと繋がっている。ああ、もう少しで……
そこで目が覚めたのか、そこまでしか覚えていないのか、目が覚めてからなんとも不思議な、なんといったらいいか、死に近付いていたのではなかろうか、と思うような夢だった。