爆相
「消太、さん」
ちゅっと可愛らしい音を立てて離れた唇の隙間で呟かれた名前に、成人して落ち着いた声になったなと止められていた息を吐けば再度唇を重ねられた。
「ん…ぅ、爆、ご」
「名前」
唇の角度を変えるため僅かに離れた時に名前を呼べば、爆豪は今朝の要望を伝えてくる。
『いい加減名前で呼べや』
少し視線を外し言う元生徒の顔は不機嫌そうだが、それが照れ隠しなのを俺はよく知っていた。驚くほど合理的に外堀を埋められ、気づいたら同棲し始めて一年経とうとしていた。生徒の肩書に元が付くようになってからは4年。しかし、今更名前で呼ぶのは恥ずかしい。が、元とはいえかわいい生徒の要望なら自分の気持ちは二の次だ。見た目とは違い柔らかい髪を撫でつつ『わかったよ、勝己』といえば、猫にでもなったかのようにもっと撫でろと手のひらに頭を押し付けられた。
それを思い出し「勝己」と言えば、嬉しそうに目を細め唇を重ねてくる。少し開いていた唇からヌルリと入り込んだ軟体動物の様な舌が口の中を舐め回していく。一体どこで学んだのか、爆豪のキスは驚くほど上手い。俺以外とは付き合っていないと言っていたから、本業で習ったのだろうか?爆豪のようにビルドチャートに入るヒーローが如何わしい店の潜入捜査をするとはまず無いだろうし。
等とぼんやり考えつつ、気持ちよさに身を委ねていると、舌に鈍い痛みが走った。
「何考えてんだ」
「…お前のコト考えてたよ」
そう答えるものの、爆豪は眉を寄せたままもう一度口づけ舌を甘噛みしてくる。それが猫が甘えている様で自然と口の端が上がってしまう。
「ホントだよ」
そう言っても信じていないのか、勝己は「そーかよ」と少し下唇を突き出し不満ですといった態度を取ってくるが、そんな拗ねる姿も猫の様で愛おしさが積もっていく。
「本当にお前は可愛いね」
頬に口付け両手で髪の毛を掻き乱せば「あー!!クソ!」と叫ぶと、勝己はぎゅうぎゅうと俺を抱きしめ「アンタのほうが何倍も可愛いわ!」と叫んできた。こんなおじさんに可愛いとか…と思うが、勝己に言われれば嬉しさを感じるてしなうのだから、惚れた弱みというのは恐ろしい